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3月17日(木)・・・西日本へ「疎開」を 〈伝えたい―阪神から〉

■内田樹さん(60) 神戸女学院大教授

 阪神大震災が起きたとき、小学6年の娘と芦屋のマンションに住んでいた。タンスの引き出しが顔に飛んできて目が覚めた。歯が折れていた。周辺の木造家屋はほぼ全壊し、神戸の街から煙が上がっていた。マンションは半壊、近くの小学校の体育館で3週間の避難生活を送った。

 今回の東日本の地震で対応が難しいのは、まだ災害が終わっていないことだ。福島の原発が危機的な状態にある。気になるのは政府・東電の情報が遅く、被害を過小評価する解説が続いていることだ。首都圏から避難が必要ないと言い切る専門家もいる。だが、この後、大量の放射性物質が飛んできた場合、この人はどう責任をとるのだろう。

 危機的状況では、リスクを過小評価するよりは過大評価する方が生き延びる確率は高い。避難が無駄になっても責める人はいない。「何事もなくてよかったね」と喜べばいい。「安全だ」と信じ込まされて、いきなり「さあ逃げろ」と言われたらパニックになる。メディアの報道では「避難できる人は避難した方がいい」という専門家の発言が抑圧されているように感じる。

 しょうがないから、僕はネットで安全な西日本などへの「疎開」を呼びかけている。とりあえず、妊婦や幼児や病人、児童生徒たちは、用がなければ被災地と救援の活動拠点となる都市部を避けた方がいい。

 政府は可能な人には「疎開」を呼びかけるべきだろう。東北・関東から100万でも200万でも人口が少なくなれば、資源への負荷も軽くなり、救援の資材や人員の搬送も円滑になる。

■西日本は被災者を受け入れて

 いま、西日本のわれわれに必要なのは疎開を受け入れる準備だ。安全な西日本だからできる支援策を講ずるべきだろう。大阪市長が市営住宅500戸を提供すると言ったが、こういう「歓待」政策が必要だと思う。


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私も16日、大学の宿泊施設の点検をした。授業再開のめどがたたない被災地の大学から被災学生を受け入れる計画を検討している。どの大学もそれぞれの規模で被災学生の受け入れを考えてほしいと思う。

 西日本の役割は支援する人を「東」へ送り込み、支援を要する人たちを呼び込むこと。一極集中の首都機能の一部を大阪に移す必要もある。オールジャパンで、それぞれの役割にふさわしい支援を工夫することが必要だ。

 被災経験から言えることは、被災者は「失ったもの」を数えないこと。命あってのものだねだと、「手元に残ったもの」を数え上げてみる。希望を持つ。希望を持っている人間はしのげる。そして最後は人情にすがる。16年前、人の情が身にしみた。(聞き手・中村正憲)

    ◇

 16年前の被災地「阪神」から、東北・関東の被災地へのメッセージを届けます。
by nsmrsts024 | 2011-03-17 01:57 | 朝日新聞・綜合、政治

千年に一度の巨大津波と原発事故による核災害


by nsmrsts024