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2017年1月12日(木 ):慰安婦像を巡る韓国の市民活動は民主主義を逸脱している

日本大使の一時帰国は韓国にとって想定外?


 韓国・釜山市の市民団体が30日、同市東区の日本総領事館前に、元慰安婦を象徴する少女像を設置したのに対し、日本政府は、長嶺安政大使と森本康敬総領事の一時帰国という韓国政府が予想もしなかった強い措置で対抗した。

 私も2012年8月、在韓大使をしていた時に、李明博大統領が竹島に上陸したことに対する対抗措置として一時帰国を命じられたことがあった。しかし、この一時帰国は、韓国の国家元首である李明博大統領が日本の領土に上陸したことに起因するものである。

 私の一時帰国は、韓国側としても当然予期しうる措置であったであろう。韓国国内で大統領を擁護する多くの声に交じって、大統領の行動を批判する良識派の声も聞かれた。

 反面、今回の措置は市民活動家の行動に起因するものであり、韓国政府自体の行動ではなく、非難されるべきは政府の無作為であったということで、その重みは違うともいえる。しかし、外交交渉の合意事項を誠実に実行していなかったことに対する抗議の措置としては決しておかしなことではないであろう。

 この措置によって日韓関係は当面一層の停滞感が漂うであろう。しかし、朴槿恵大統領と崔順実容疑者の関係が取り沙汰されて以来、韓国の野党の勢いが増し、日韓の慰安婦合意の見直しを主張するなど、先行き不透明感が漂っていた。こうした中で、今回の日本の措置は、日本として韓国の慰安婦合意見直し論には応じないという強い姿勢を、大使の帰国という抗議の姿勢によって示したものであり、長い目で見た日韓関係を考える場合、日韓関係を正しい方向に導くものであると考える。


総領事館前の少女像設置は一部市民活動家の暴挙


 釜山市の市民団体は、昨年12月の慰安婦問題に関する日韓合意の一周年記念日にあたる28日、日本の在釜山総領事館の前に慰安婦を象徴する少女像を設置しようと試みた。これに対し、ここを管轄する釜山市東区は市民活動家団体が設置する少女像は通行の妨害になるとして強制撤去した。しかし、市民活動家らの電話による抗議など激しい批判を受け、一転して設置を容認した。

 日韓の慰安婦に関する合意では、韓国政府は日本大使館前の少女像を撤去するよう努力することになっていた。そもそも韓国国内の世論調査を見れば、慰安婦問題に関する合意よりも、日本大使館前の少女像の撤去に関する反対の方が大きい。韓国政府は慰安婦に関する合意の受け入れを元慰安婦や国民に説得しつつ、同時に少女像の撤去も行うことは困難であった。そこで、まず韓国国内での慰安婦問題の決着を優先し、それを踏まえて国民に少女像の撤去を説得する考えであったのであろう。

 そうした意図に反し、釜山の総領事館の前に新たに少女像が設置された。日韓の慰安婦問題合意は、日本が10億円を拠出した「和解・癒し財団」の努力によって解決の方向に大きく動き出していた。日本は少女像の撤去が確定する前にもかかわらず、拠出に応じたことは、それだけ誠意をもって合意を実現しようとしたということである。それにもかかわらず新しい像が設置されたことは日韓合意の精神に反することは明らかである。

 韓国の市民活動家は大統領を国会での弾劾決議に持ち込むなど、今勢いが増している。もともと慰安婦支援団体の抗議活動に対して無力であった韓国政府である。しかし、こうした市民活動家の暴挙ともいえる行動が外国との関係に悪影響を及ぼすことは許されない。これが適切に処理されない限り安定した日韓関係は望めない。日本としては、こうした市民活動家の暴挙とこれに対する韓国政府の無作為は容認できないことを強い姿勢で示す必要があった。

これ以上譲らない断固たる姿勢で4つの措置を決めた日本


 そこで日本政府は、当面の間、(1)長嶺大使、森本釜山総領事の一時帰国、(2)釜山総領事館職員の釜山市関連行事への参加見合わせ、(3)日韓通貨スワップ(交換)協議の中断、(4)日韓ハイレベル経済協議の延期――の4つの措置をとることを表明した。こうした措置は、外交ルートを通じて韓国側に伝達された。その措置の解除について菅官房長官は、「状況を総合的に判断する」として、韓国政府の対応を注視する姿勢を示した。

 ここでいう大使の一時帰国は、大使の召還とは違う。大使の召還は将来の外交関係の断絶も辞さない強い措置である。他方、大使の一時帰国は相手国政府に対する抗議と今後の対応について本国政府と協議することが主たる目的となろう。しかし、単なる外務省×大使館を通じた抗議とは違い、格段に強い措置であり、国民の注目度も違ってくる。

 この4項目の措置を聞いた韓国の外交部は6日午後、長官(大臣)が長嶺大使を外務省に招致し、日本の対抗措置に対して遺憾の意を伝えた。これは、韓国政府が日韓関係の悪化について、深刻に受け止めている表れである。外相と大使は、日韓慰安婦合意を徹底的に履行していく立場を改めて確認し、両政府の信頼関係を基礎に、日韓関係を引き続き発展させて行くべきという認識で一致したということである。また、企画財政省も同日、「政治外交的な原因で韓日スワップ協議を中断するのは遺憾だ。経済金融協力を維持することが望ましい」とコメントした。

 反面、朴大統領の職務停止によって国政の主導権を握る野党勢力は、慰安婦問題を巡る日韓合意の再交渉を求めている。最大野党「共に民主党」の前代表であり次期大統領の有力候補である文在寅氏は今月15日、「日本の法的責任と公式謝罪を明確にすべきだ」と指摘し、合意を認めない姿勢を示した。

 こうした中で日本政府が取った措置の内容は予想外に厳しいものであり、結果として日韓関係は一層冷え込むことになりかねない。にもかかわらず、韓国の最大野党「共に民主党」は相変わらず、「わずかな真心のこもった謝罪もすることなく、自らの正当性ばかり主張する日本政府は、人権と世界正義と争うつもりか」と日本側を非難し、日韓の慰安婦合意の破棄と日本政府の謝罪を要求したという。

しかし、日本政府の措置は、日韓の慰安婦合意の内容は再交渉する余地がなく、それを誠実に履行する以外ないことを意味していることを「共に民主党」などの野党は全く理解していない。これまで、日本政府は日韓関係の安定化のため多くの韓国側の一方的な要求に甘んじてきた側面がある。だが、慰安婦に関する日韓合意は幾度にもわたる紆余曲折を経て実現したものである。それが、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を中心とする政治活動家の要求で日本政府が屈することはないということである。


釜山総領事館前の少女像設置は孤立した挺対協の焦燥感の表れか

 そもそも、挺対協は元慰安婦の声を代弁しているとは言い難い。韓国政府が、日本政府と合意して設置し、日本政府が10億円を拠出した「和解・癒し財団」は昨年12月23日、初めてマスコミ向けに発表文を出した。それによれば、現在の生存者39人(合意時点では46人)に対し34人が支援金を受け取る意思を表明し、その中には挺対協と行動を共にする「ナヌムの家」の支援を受ける元慰安婦が5人含まれていることも明らかにしたとのことである。すなわち、多くの元慰安婦は今般の日韓慰安婦合意を受け入れており、挺対協とともに日韓合意を批判しているのは、ごく一部の少数派である。この問題は既に決着しているのである。

 ただ、問題を複雑にしているのは、これに野党の政治家が迎合しているということであり、その中心が「共に民主党」である。これは韓国の国内政治が対立と抗争の歴史であったことを反映してもいる。

 韓国では、朴大統領の弾劾に伴い、同大統領が進めた政策を全面的に否定するムードが拡大しており、来る大統領選挙に向けて世論迎合的な姿勢が強まっている。これに対し、韓国政府は財団事業の進捗状況を積極的に公表し、元慰安婦の間で財団事業に理解が深まっていることを周知しようとしている。しかし、挺対協に操られた市民活動家はこうした事実を無視しているのである。

挺対協は過去にも慰安婦問題の解決を妨害してきたことがある。アジア女性基金が設立された時、7人の元慰安婦は日本の基金からの償い金と総理からの謝罪の手紙を受領した。ところが、挺対協は日本政府が慰安婦問題に関する法的責任を認めたものではなく、償い金も日本政府が直接拠出したものでないとして元慰安婦に受領を拒否させ、その代わり韓国政府に慰安婦への見舞金を提供させた。


 挺対協の実態を示したのは、最初に受け取った7人の元慰安婦に対しては様々な嫌がらせを行い、韓国政府の見舞金を渡さなかったことである。本来、元慰安婦の支援者であれば、日本の基金からの償い金を返還させ、その代わり韓国政府の見舞金を渡すべきである。しかし、そうせずにかえって様々な嫌がらせをしたということは、挺対協が真正な慰安婦支援団体というよりは政治活動家としての性格が強いことを意味しているのではないか。

 ちなみに、挺対協がアジア女性基金からの償い金の受領を拒否させた後、実は54人の元慰安婦が償い金を受け取った。アジア女性基金は最初に償い金を受領した7人の元慰安婦が迫害を受けたことから、この事実を公表しなかった。アジア女性基金と挺対協、どちらがより元慰安婦に配慮した姿勢と言えよう。

民主主義の観点からも行き過ぎた韓国の市民活動家

 そもそも、韓国の市民活動家の行動は行き過ぎである。朴大統領に対する支持率が5%前後に落ち込んだとはいえ、国民の一部の抗議活動によって選挙に当選した大統領が国会の弾劾決議採択に追い込まれるというのは民主主義として如何なことかと思う。それが成功したことにより、市民活動家は力ずくで何でもできると考えるようになったら、非常に危険なことである。

 北朝鮮の核ミサイルの実戦配備が近づいている。北朝鮮が核ミサイルを配備したら韓国がいかなる脅迫を受けるか考えただけでも恐ろしい。日韓関係は、東アジアの地政学を眺めながら、理性的に対処していくことが何よりも求められている。一部の政治活動家に支配された現状を打破していくことが求められている。韓国の理性的な対応を求めたい。

(元駐韓大使 武藤正敏)




【釜山・慰安婦像設置】慰安婦像は少女像にあらず 菅義偉官房長官「問題視しているのは慰安婦像」
菅義偉官房長官は11日の記者会見で、昨年末に韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像について政府が「少女像」と呼んでいることに関し、「政府として問題視しているのは慰安婦像のことで、そういう意味で『慰安婦の少女像』あるいは『少女像』ということに尽きるのではないか」と述べた。あくまでも呼称ではなく、慰安婦像の存在そのものが問題だとの見解を示したものだ。

 韓国側には慰安婦像を「少女」として描くことで、旧日本軍の残虐性を強調する狙いがある。このため、日本政府が「少女像」と呼ぶのは不適切との指摘が出ていた。

 韓国では、多くの10代前半の女性が旧日本軍によって強制的に連行されて慰安婦にされた-との主張が横行している。しかし、日本政府の調査などでは、「少女」と呼ばれる年代の女性が慰安婦になったことは裏付けられていない。

 実際、米軍が昭和19(1944)年、ビルマ(現ミャンマー)で捕らえた朝鮮人慰安婦から聞き取り調査して作成した報告書によると、調査対象となった女性20人の平均年齢は23歳で、最年少は19歳が1人いるだけだった。ただ、韓国側はこうした事実関係を無視し、慰安婦の「性奴隷説」や「20万人説」を国際社会で流布し続けてきた。

 外務省筋は「像自体が少女をかたどっているのは事実。政府は“いわゆる”という意味で『少女像』という言葉を使ってきたのが実情だ」と説明している。



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by nsmrsts024 | 2017-01-12 04:21 | 朝日新聞・綜合、政治

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