2017年3月20日(月):混迷深まる豊洲移転 地下水処理、検出値上昇に影響か

 東京都の豊洲市場の地下水から、再び環境基準を大きく超す有害物質が検出された。「施設に影響はなく安全」と専門家は指摘するが、食品市場として信頼は得られるのか。築地市場からの移転を延期している小池百合子・東京都知事の判断に大きな影響を与える。

 「結果として汚染は残っているということ」。豊洲市場の1月公表の地下水検査結果が確定し、専門家会議の平田健正座長は、環境基準以下を目指していた土壌汚染処理が達成できなかったことを認めた。

 2014年から約2年、ほぼ環境基準内だった検出値が急上昇した原因について、専門家会議は都の「地下水管理システム」が昨年8月に稼働を始めた影響を挙げた。土壌汚染対策の柱の一つで、敷地内に58カ所ある井戸でくみ上げて排水し、地下水位を一定に保つ。稼働以降に9回目の検査があったため、「土壌に一部残っていたベンゼンなどが地下水汚染を生じさせ、システム稼働によって移動した可能性が高い」との見解を示した。1~8回目と9回目で明らかになった採水時期の違いも「影響はなかった」と判断した。

 環境基準の100倍のベンゼンをどう見ればいいのか。

 ベンゼンの環境基準は、地下水の場合、体重50キロの人が70年間、毎日2リットル飲み続けると10万人当たり1人ががんになる確率が上がるとされる値だ。豊洲市場の場合、地下水を飲用や洗浄に使うことはなく、地下と食品を扱う建物はコンクリートで隔てられている。平田座長は「何回も話しているが、市場施設の地上部分は都内の他の場所と変わらない」と答え、科学的には安全だとの見方を示した。

 専門家会議は今後、管理システムで地下水をくみ上げることで、浄化策を検討する。当初、4月までにまとめる予定だった報告書は「少なくとも2カ月は遅れる」と話した。

 ログイン前の続き外部の専門家はどう見るのか。森田昌敏・愛媛大客員教授(環境化学)は「ベンゼンなどを環境基準までなくすのは至難の業。(地下に)封鎖されて外に出なければ問題はない。市場として使うなら、安全な科学的根拠を発信し続け、消費者の安心をつくっていくしかない」と指摘する。

 一方、横浜国立大の浦野紘平名誉教授(環境リスク管理学)は「(9回目より)数値が下がっていれば『いずれきれいになる』と判断できたが、今回の結果では数値が下がるのに何年かかるか分からない。『(市場で)飲まないし使わないので実害はない』と言えるが、望ましい環境ではない。豊洲に移転するのが適切か、という議論は避けられない」と話した。

■小池知事、「消費者の安心」を重視

 小池氏は19日、報道陣に「良い数値ではない。専門家の分析も出るでしょうから、一つ一つ重ねて(移転に関する)総合的な判断に結びつけたい」と話した。

 小池氏は都議会で、豊洲市場が土壌汚染対策法上の措置を満たしており、「法的に安全」と認めている。一方、「法令を大きく上回る汚染対策を徹底し、信頼を得るのが私の決意」とも述べており、築地市場からの移転は「消費者の安心を得られるか」という点で判断する考えだ。

 ただ、小池氏の判断の時期や基準は見通せない。

 小池氏はこれまで、都の専門家会議や、将来にわたる市場の必要性なども議論している大学教授らの市場問題プロジェクトチーム(PT)の検証が必要、としてきた。しかし、専門家会議の平田座長は19日、「我々は『安心』を担保できない。行政としての判断だ」と述べている。

 「汚染対策だった盛り土が主な施設下で無く、地下水も汚染があった。知事が『安心』と判断できる基準がない状況だ」と小池氏周辺は話す。

 小池氏は、ガス工場跡地を市場予定地とし、事業費が巨額に膨らんだ過去の経緯の解明も、「移転判断に影響を及ぼす」とする。築地市場でも土壌汚染が見つかった。こうした多くの要素を踏まえて「総合的に判断する」と繰り返すが、「どんな判断をするにしても、多くの都民が納得できる説明をするのは難しい」と話す都幹部もいる。

 自らが中心の地域政党「都民ファーストの会」で単独過半数を狙う7月の都議選で、「大きな争点」と位置づけている。

 この日の会議を傍聴した市場業者からは、「新しい建物には行きたいが、客が買ってくれなければ行けない」「豊洲という土壌への不信は、今さらぬぐうには大きすぎる」などの声があがった。業界団体・築地市場協会の伊藤裕康会長は「安心は心理的な問題。都議選にからめず、市場は市場の問題でけりをつけてほしい」と話した。(小林恵士、伊藤あずさ、西本ゆか)

■築地市場の豊洲移転と土壌汚染をめぐる経緯

1998年ごろ

 築地市場の移転先として豊洲が有力に

2001年

 豊洲の東京ガス工場跡地から環境基準の最大1500倍のベンゼン検出後、都が豊洲移転の方針を決定

08年

 敷地から環境基準の最大4万3千倍のベンゼン検出が明らかに。都の専門家会議が法基準を上回る土壌汚染対策を提言

10年

 都が豊洲移転を正式表明

11年

 都が土壌汚染対策工事に着手

14年

 汚染対策が完工。全9回の地下水検査開始

16年8月

 小池百合子都知事が就任し、移転延期を表明。9月にかけて、敷地内の地下水位を一定に保つ管理システムが稼働

同年9月

 8回目の地下水検査で敷地内の3カ所で環境基準をわずかに上回るベンゼンなど検出

17年1月

 最終9回目の地下水検査で72カ所で環境基準の最大79倍のベンゼンなど検出。専門家会議が再検査開始

同年3月

 再検査の結果、9回目の数値が確定




【豊洲・石原元知事証人喚問詳報(1)】「脳梗塞の後遺症でひらがなさえも忘れました」 記憶のあやふやさ伝えるも、豊洲移転は「私が決裁」明言
《豊洲市場(東京都江東区)の移転問題を検証する都議会百条委員会の証人喚問4日目が20日午後、始まった。この日は移転決定当時の石原慎太郎元知事への質疑が行われる》

 《石原氏は3日に開いた会見で「最高責任者として裁可した責任がある」と、都庁トップとしての自身の責任を認めた。一方で、知事就任前から豊洲移転の方向性は「既定路線だった」とし、豊洲の地権者だった東京ガス側との契約交渉は「(側近に)一任していた」として詳細を把握していないとの立場を貫いた》

 《ただ、石原氏に交渉担当を任じられた「側近」の浜渦武生元副知事は19日の百条委の証人喚問で、処理費用を含む土壌汚染など核心部分への関与を全面的に否定。真相が謎に包まれたままとなっている中、石原氏がどのような発言をするのか注目される》

 《午後1時すぎ、桜井浩之委員長にうながされ、石原氏が淡々と宣誓書を読み上げた。体調に不安があるとして、石原氏側からの申し入れにより、この日の質疑時間は1時間程度を予定しており、石原氏の背後には補助として矢田次男弁護士が座っている》

 《氏名、職業などを問われた際、石原氏は多少しゃがれた声で、職業を「作家です」と回答。最初の質問者として、自民党の来代勝彦都議が質問台に立った》

 --石原元知事において在任中に多くの実績を残されてきた。その中でも都が財政赤字団体になる前に財政を再建された。この貢献は大きく、感謝している。そのことをまず申し上げておく。昨日まで浜渦元副知事をはじめ、多くの証言を聞いた。なぜ汚染がある豊洲に市場用地を決定したのかを都民は知りたい。豊洲移転を決めたのは(すでにあった流れの上での)政治判断か、それとも、さまざまな情報をもとに知事が独断で決定したのか

 「その前に私事ですが、2年前に脳梗塞を患っていて後遺症に悩んでいます。記憶を埋蔵している部分がうまく働きませんで、残念ながら全ての字を忘れてしまいました。ひらがなさえも忘れました。非常に記憶を引き出そうとしても出ないことが多々あるのでご了承ください」

 《石原氏が前もって脳梗塞の影響で、記憶にあやふやな部分があることをことわった後、再度、都議から質問が投げかけられた》

 --豊洲に移転をしたのは、石原氏の政治判断があったからなのか

 「政治判断というより、すでに築地が限界にきていて、鈴木(俊一元知事)さんの時代から市場を移転しようというのが懸案でした。確か(前任の)青島(幸男元)知事も受け継いで、青島知事から(自分への)引き継ぎ事項の中に文言として『豊洲地域に市場を移転する』とあって、懸案事項の一つだったと思っています」

 --青島元知事からの引き継ぎだったというが、決裁をしたのは石原氏自身か

 「まさしくそうです。紆余曲折(うよきょくせつ)があって、審議会で審議し、各部局が専門性をもって調査もし、最終的に時間をかけた後、誰だったかは覚えていないが、まとめて決裁を仰いできたのは知事本局長だったと思うが、私と浜渦のところに『決裁を願いたい』と来ました。『汚染の問題あるけど、確かに解決できるのだな』と聞いたら『可能であります』と応えました。それで私も『分かった、決裁しましょう』ということで決裁しました」

 --当時、担当職員から築地市場について報告を受けたということだが、築地には耐震性などの課題があった。一方、豊洲には土壌汚染問題があった。知事が都の13兆円の予算、16万人の職員のこと全てを把握できるわけはない。だが、職員に頼んだ業務についても知事の執行責任だ。それについては認めるか

 「まさしく行政は、それぞれが専門を生かして積み上げてピラミッドをつくるようなもの。頂点にいた私が報告を受けて、全体の総意を受けて決裁しました。土壌の問題には『(解決できる)確信があるのか』と聞いたら『大丈夫』と言ったので決裁しました。その責任は認めます」

 《座ったままではあるが、現在のところ石原氏はよどみなく質問に回答している》

 --小池百合子知事が独断で議会にも相談なく独断で豊洲市場の開場を延期した。行政には継続性と安定性が求められている。当時、知事として政治判断し、移転判断するにおいて豊洲のどこが他の候補地より優れていたのか

 「私は覚えているが、かつてパリにある市場地区のレストランで食事しているとき…、パリの国道の真ん中に生鮮食品を扱う市場がありまして、とても驚きました。東京も道路事情が変わってくるだろうし、相手(の東京ガス)も(売却を)渋っている豊洲より、(都西部の)三多摩のどこかに市場をつくったらと言ったら(都幹部に)一笑に付された。都庁全体で整理して出来上がった大きな流れに逆らうわけにはいかないし、知事本局長の報告を聞いて(私は)裁可しました」

 --豊洲移転の決断は大英断だったと思う。将来を考えたとき、間違いなく豊洲に移転してよかったと思うだろう

 《来代都議は石原氏が当時に豊洲移転を決断したことについて評価して質問を終えた。東ガスとの用地取得交渉などに言及することはなかった》




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by nsmrsts024 | 2017-03-20 07:20 | 朝日新聞・綜合、政治

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