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4月3日(日)・・・英の放射能海洋汚染半世紀…健康被害なくても拭えぬ不信

放射性物質の流出として過去最悪とされる海洋汚染は、1960年代から70年代にかけて英国の核燃料再処理工場から起きた。周辺漁場で取れる海産物に今、基準を超える汚染は見られない。だが、廃液は今も海に流され続け、住民や周辺諸国は不信をぬぐえずにいる。

 白いカモメの群れが高い煙突をかすめて飛ぶ。英北西部のセラフィールド。絵本「ピーターラビット」の故郷として観光人気の高い湖水地方から西へ約40キロ、アイリッシュ海に面した敷地に、再処理施設がたち並ぶ。

 1950年代前半には、軍事目的で再処理が実施されていた。以来半世紀、再処理に伴い、放射性物質を含む廃液を海に流し続けてきた。濃度は70年代がピーク。その後は処理技術が向上したため、近年は100分の1以下になっている。

 海洋汚染が発覚した80年代以降、付近の海岸は一時立ち入り禁止になっていた。放射性を帯びた溶液漏れ事故もしばしば起き、運営会社による事故隠しも浮上。批判が高まった。

 そのつど英政府は「健康に影響はない」と説明したが、アイリッシュ海がつながる北海に面したノルウェー、アイスランドは海産物の汚染を心配し、操業停止を求めている。特に対岸のアイルランドは毎年、魚介類などの放射能を測り、漁民の健康調査をしている。

 これまで、健康への影響は立証されていない。だが、ノルウェーのソールハイム環境担当相は「セラフィールドで爆発や火災が起きたら、わが国の環境はチェルノブイリ原発事故の7倍の影響を受けるだろう」と国民の不安を代弁する。

 沿岸はエビやタラ、カレイの宝庫。「廃液は海で拡散するから、大丈夫だ」と英国漁業者連盟の北西地区議長ロン・グレアムさん(66)は請け合う。

 それでも実際の汚染とは別に、風評被害が起きた。英国名物フィッシュ・アンド・チップス(魚とジャガイモのフライ)の店が「アイリッシュ海の魚は使いません」と張り紙を出したこともあったという。
グレアムさんは、福島原発事故の影響で「日本の漁師たちが、風評被害を受けないか、心配だ」と顔をくもらせた。

 セラフィールドでは1万人が働く。原子力は、ほかにさしたる産業のない地域の大黒柱といえる。地元で表だって批判を唱える人はわずかしかいない。

 だが、この地方の公衆衛生を統括するジョン・アシュトン博士は「住民の胸には不安感がよどんでいる。そのいくばくかは原子力産業の秘密体質に由来する」と語る。セラフィールドの環境団体COREの代表マーティン・フォーウッドさん(70)は「微量とはいえ、汚染魚を食べ続けたら、将来どうなるかわからない」と話した。(セラフィールド=橋本聡)

■魚介類、健康心配ない水準に

 セラフィールド再処理工場から、最も高い濃度の放射性物質が海に排出されていたのは、1970年代だった。英スコットランド政府の報告書などによると、濃度が高いところでは、セシウム137で海水1リットル当たり12ベクレル以上の地点もあった。80年代以降は、放射性物質の排出は大きく減り、2007年には0.2ベクレルに下がった。

 福島第一原発事故の影響では、3月30日に原発から30キロ沖合の地点でセシウム137が1リットル当たり8.5ベクレルを記録した。これは、70年代のセラフィールドの値に迫り、現在の42倍の濃度になっている。

 セラフィールド近海では現在、「フィッシュ・アンド・チップス」の材料になるタラから、1キロ当たり10ベクレルのセシウム137が検出されている。他の魚類や貝類、甲殻類、海藻からも1キロ当たり約1~8ベクレル検出され、セシウム以外の放射性物質も複数、検出されている。日本の魚や肉の基準は1キロ当たり500ベクレルだ。

 英環境省などによると、セラフィールドの漁師らが近海の魚介類を口にすることで受ける被曝(ひばく)線量は、1970年代中頃には年約3ミリシーベルトに達し、80年代前半まで1ミリシーベルトを超えていた。最近は約0.16ミリシーベルト程度で、健康への影響は心配ないレベルだという。
by nsmrsts024 | 2011-04-03 09:44 | 朝日新聞・綜合、政治

千年に一度の巨大津波と原発事故による核災害


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