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5月13日(金)・・・田植え、塩害に挑む 7割海水につかった仙台の専業農家

コメどころ・仙台平野の沿岸部は、東日本大震災で津波被害を受けた。塩害でコメ作りを諦めざるを得ない地域が多い中で、今年の作付けに挑む農家がいる。「どれだけ実るか分からない。でもコメを作りたい」。期待と不安が入り交じる。

 仙台市若林区の専業農家大友一吉さん(66)は、海岸から3~4キロ離れた地域に8ヘクタールの水田を持つ。津波で7割が海水につかったが、土砂やがれきが流れ着くことはなく、震災翌日には海水がひいた。

 代々の農家。減農薬・化学肥料の環境に配慮した農法で銘柄米「ひとめぼれ」を作ってきた。それだけに、津波をかぶっても簡単には諦められない。「水も確保できるし、農機具も無事。塩害だけで作付けできないのは悔しいんだ」

 震災の時、名取川近くの畑にいた。激しい揺れの後、自宅に戻って大きな被害がないのを見届け、再び畑に向かった。「津波が来るぞ」。知人の声で堤防に駆け上がると、川は一気に水かさを増した。川に注ぐ水路を逆流し、海水が自分の田んぼにも流れ込んだ。

 3月下旬、市や地元農協は津波の到達地点を含む約630ヘクタールの170カ所から土壌を採取し、塩分濃度を調べた。大友さんの田んぼは4月の調査で基準を上回ったが、水を入れて塩分を洗い流す除塩対策が有望とみられた。

 育苗箱の苗は、6センチほどに育っている。除塩対策をした後の今月下旬に田植えをする予定だ。例年より2週間ほど遅い。震災前は、10アール当たり600キロの収穫があった。今年は、半分も取れればいいと覚悟している。品質の不安もある。

 農林水産省によると、千葉県以北の沿岸6県の農地に津波被害があるが、宮城県が3分の2を占める。宮城県によると、被災水田は県内の1割の約1万ヘクタール。大半で作付けはできないが、仙台市や石巻市などの一部地域では、計1139ヘクタールの作付け計画がある。
大友さんは、そんな挑戦者の一人だ。「やれるところから始めないと前に進まない。復興への一歩にしたい。うまくいけば、皆の自信にもなる」

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 作付けに向けた課題は多い。宮城県は、除塩対策として水を抜く作業の繰り返しを勧めている。作付けが可能な目安として、(1)がれきや土砂がなく、海水のみが流入(2)水を確保でき、排水で下流域に「2次災害」が起きない(3)除塩対策で土壌の塩分濃度が限界とされる0.1%未満に下がる、の3点を示した。

 重視されるのが2次災害防止。できなければ、農家は作付け自粛を余儀なくされる。下流域の排水施設が損傷しており、仙台市だけで270ヘクタールが「自粛地域」になる。

 また、作付けできても、うまく育つかどうか。

 宮城県仙台農業改良普及センターの佐野幸一技術次長は「除塩対策が不十分なら、田植え直後の苗は浸透圧の関係で水分を吸えずに枯れてしまう。田植え前の時期の塩害の事例はほとんどなく、収量や品質の予測も難しい」と話している。(荒海謙一)
by nsmrsts024 | 2011-05-13 17:28 | 朝日新聞・綜合、政治

千年に一度の巨大津波と原発事故による核災害


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